asken テックブログ

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「上期は選択と集中なので戦略はこの6つ!」と言った部長は私です ― 選択と集中をやり直したら、ボトルネックが動き始めた話

はじめに

この記事は、株式会社asken (あすけん) Advent Calendar 2025の12/25の記事です。

こんにちは。株式会社 asken プロダクト開発部長の村上です。プロダクト開発部長という肩書きですがエンジニア組織の部長と読み替えてもらったほうがわかりやすいかもしれません。

この記事は、エンジニア組織を停滞させてしまった過去の自分への反省文であり、未来の自分が同じ失敗を繰り返さないためのメモです。

「戦略」「選択と集中」言葉としては理解していたはずなのに、なぜ自分はそれを実行できなかったのか、そして、何を変えたことで組織は再び動き始めたのか。

これは成功談というよりうまくいかなかった時間と、内省して自分と向き合った記録です。

同じような立場で、同じような違和感や行き詰まりを感じている方に、ほんの少しでも参考になれば幸いです。


プロダクト開発部長(エンジニア部長)の仕事とは何か

プロダクト開発部長(エンジニア部長)の仕事を、今あらためて一言で表すなら、こうだと思っています。

エンジニア組織の成果が最大化されるように、 「何に集中するか」を選択し、 そこに戦力を集中的に投下すること。

戦略とは、方針をきれいに言語化することではありません。 限られた時間と人数の中で、どこに戦力を集中し、どこを諦めるかを決め切ることです。

  • 良い戦略とは、最も効果が上がる一点に戦力を集中投下すること
  • 正解は最初から分からないため、小さく試し、早く終わらせ、早く学ぶ組織を作ること

これらは、著書『良い戦略、悪い戦略』や『リーン・スタートアップ』を通じて、以前から理解していたつもりでした。頭では、分かっていたつもりでした。問題は、分かっていても選べなかったことでした。

25年度上期、選択と集中に失敗した話

上期のはじめ、私はこう宣言しました。

「今期は選択と集中します。注力テーマはこの6つです」(ドヤァ)

当時の自分としては、かなり絞ったつもりでした。しかし、EMやテックリードと一つひとつテーマを見ていく中で、こんな議論が続きます。

  • 「今はやらなくていいけど、後に回すと開発コストに影響が出そう」
  • 「ここを触るなら、関連しているあれも一緒にやったほうが効率がいい」

どれも正しい。どれも「やった方がいい」。その結果、注力テーマは6つから10個に増えました(笑)。

askenも組織を拡大して優秀なメンバーが増え、各テーマにそれぞれ担当を置くことができるようになってしまっていました。もう迷うことはありません。全部並行に動かすことにしました。

今なら分かります。この時点で、戦略はすでに破綻していました。

「大事そうなことは可能な限り全部やる」それは、何も選ばなかったのと同じ状態でした。


各テーマは個別には動いているように見えても、組織全体では確実に力が分散していました。

あるテーマでメンバーの稼働がネックになっても、別のテーマで解決できない問題が詰まっても、

すでに戦力が分散しているため、フォローする余力がなかったのです。


4ヶ月後に起きた現実

「選択と集中」の宣言から4ヶ月が過ぎ、8月に差し掛かる頃、戦略が機能していないことは誰の目にも明らかでした。

  • 達成できそうなテーマはごく一部
  • 問題は認識されているのに、状況はあまり変わらない
  • 組織は停滞しており、組織効力感が明らかに下がっているチームもある

メンバーは努力していました。ただ、テーマが解決していないため、組織的にもプロダクト的にも眼に見える変化や前進感が起きていませんでした

この状況を招いた原因は明確でした。テーマを絞りきれなかったことです。

なぜ、選べなかったのか

今回実施した10個のテーマは「全部大事」に見えます。正直、「全部やったほうがいいこと」ではあります。

しかし、前述の通り頭では選択と集中が大事とわかっていながらついついやることを増やしてしまっていました。

この現象は数年前にも引き起こしてしまったことがあるので、おそらく自分の考え方のクセみたいなのを治さないとまた同じことを繰り返してしまう、という感覚がありました。そこで参考にしたのが、書籍『なぜ人と組織は変われないのか』で紹介されている免疫マップです。免疫マップを作ることで自分の思考の悪いクセを洗い出してみました。自分に当てはめると、構造はこうでした。

  • 阻害行動:選べない、先送りする
  • 裏の目標:コスパの悪いところに投資をして後悔したくない
  • 固定観念:貧乏性な性格で損をしたくない
    • 無駄な行動をして損した気分になりたくない
    • 失敗=時間の無駄
    • 最初から正解を出す方がコスパがいい

根っこにあったのは、間違えて損をしたくない自分を守る意識でした。日常生活でも損をしたくないあまり、物を買うときに最安値を探し過ぎて時間を無駄にする、みたいなことも度々ありました。

考え方を切り替えた

過去にも同じ状況にハマったことがあるように、注意はしようと思っているけど人の価値観は急には変えられません。

そこで、免疫マップを逆手に取り、考え方をこう切り替えました。

  • 選ばないことこそが、一番コスパが悪い、損をする
  • 損をしないためには、短い期間で一つずつ終わらせ、次の問題に移ることが最適

この考え方に沿って行動することで、

「損をするのが怖くて選べない」という歪みを小さくすることができました。

その結果、重要な課題を選び、短期間で解き切ることを繰り返すことで、ボトルネックが動き続け、組織も変化し続けるようになりました。

25年度下期:やり方を変えた

下期は、上期の反省を踏まえてやり方を変えました。

  • やることを大きく減らす
    • 同時に着手する技術課題を4つに限定(上期は10個)
  • 諦めるところは諦める
    • EMリソースを本当に必要な箇所に集中
    • 極論、EMがいなくても回るチームは自走してもらう
    • 2027年度以降に効いてきそうな改善は一旦停止
  • 1.5ヶ月スパンで振り返る
    • 半期に1回ではなく、半期に4回(四半期で2回)明確に振り返れる設計
    • 必要ならチーム統合やメンバー移動など、組織構造も変える

現在の成果(12月下旬時点)

約3ヶ月が経過した現在、以下の変化が起きています。

  • 選択した4つの技術テーマのうち、すでに3つゴールを達成しています
    • 26年度の予測MAU / DAUに対応できるDBアクセス処理の改善
    • 上期に停滞していた某チームの生産性改善:上期の約2倍に改善
    • LLMを活用した機能のアーキテクチャパタンを2つ確立
  • ボトルネックが移動し始めている
    • 前述のようにDB起因の性能問題が一定解消したので次の課題に着手できる
    • 次に取り組むべき技術的・組織的な課題が、より明確に見える状態になった

さらに、現在は解決できた課題に代わり、新たに3つの技術課題を設定し解決に向けて進行中です。

今回得た学び①:自分の考え方の癖を理解すると行動しやすくなる

能力や知識ではなく、自分の思考の癖から生まれることがあるという点です。

今回、自分は

  • 無駄を嫌う
  • 失敗をコスパが悪いと感じる
  • 最初から正解を出したくなる

という強い癖を持っていることに気づきました。

この癖自体が悪いわけではありません。むしろ、日常業務では役立つ場面も多いです。

ただし、戦略や組織設計の文脈では、選ばない、先送りするという行動につながりやすく、結果として一番コスパの悪い状態を作ってしまっていました。免疫マップを通して「なぜ選べないのか」を構造として理解できたことで、

  • 選ばないことの方が損
  • 失敗しても短期間で終わらせればダメージは小さい

と、自分が納得できる論理に変換できました。

価値観そのものを変えようとするより、自分の癖を理解し、行動の設計を変える方が現実的だと感じています。

今回得た学び②:選択と集中を行うと確実に変化が起こる

あらためて実感したのは、選択と集中を「本気で」やると、必ず組織に変化が起きるということでした。

上期は、「重要そうなことを全部やる」という状態でした。

その結果、個々のテーマは進んでいるように見えても、組織全体では何も変わっていませんでした。

一方で下期は、同時に扱うテーマを意図的に減らし、解くと決めた課題に戦力を寄せ、解き切ったら次に進む

という動きを徹底しました。

すると、テーマそのものの進捗以上に、

  • チーム間の支援が自然に起きる
  • 詰まりが可視化され、助けに行ける
  • 一つ解決すると次の問題が見えてくる

といった連鎖的な変化が起き始めました。選択と集中の価値は、「何かを達成できること」だけではありません。組織のエネルギーが一点に集まり、構造が動き始めること自体に意味があるのだと感じました。

今回得た学び③:ボトルネックが動かないのは危険なサイン

この経験から、自分なりの観測指標ができました。

1ヶ月以上、組織のボトルネックが同じ場所に留まっていないか

具体的には、

  • 振り返りで毎週同じ話をしている
  • 問題は分かっているが、構造が変わらない

これは努力不足ではありません。変化が起きていないサインです。

PDCAが回っている組織では、一つのボトルネックを解消すれば、必ず次のボトルネックが現れます。ボトルネックが移動していること自体が、前に進んでいる証拠でした。

まとめ

正しいことを、たくさんやろうとすると、組織は止まります。

重要なのは、その時点で最も重要な課題を選び、戦力を集中し短期間で解き切ることです。

仮にその選択が間違っていたとしても、早く終わらせ、学び、次に進めばいい。

今回の経験を通して、自分は「戦略が分かっていなかった」のではなく、

選ぶことを無意識に避けていただけだったのだと気づきました。

そして、選択と集中を本気で行い、ボトルネックが動き続ける状態を作れたとき、組織は自然と前に進み始めました。

もし今後、以下の状況を検知したら要注意です。

  • 注力する技術課題が増えている(現状のaskenだと4つくらいが限界)
  • 組織のボトルネックが1ヶ月以上動いていない

それは努力不足ではなく、選択と集中が崩れているサインです。

未来の自分へ。

また「今回は全部大事だから」と言い始めたら、この文章を読み返して、まず一つ選んでください。貧乏性が顔を出していますよ。

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