はじめに
こんにちは。テックブログ編集部の齋藤です。
askenエンジニアの座談会シリーズの番外編第二弾として、デザイナー座談会の模様をお届けします!UXデザイナー2名に加え、進行役として前回に引き続きPdMの伊藤さんにも参加いただきました。
この記事は、株式会社asken (あすけん) Advent Calendar 2024 の2日目の記事です。
参加メンバー
田仲
役職:UXデザイナー
所属:医療事業部
現在は事業部横断の行動変容プロジェクト*1 に携わっている。最近は、ディスカバリー・検証作業が主な仕事内容。前職ではアパレルのWeb業務を担当。UI設計からディレクション、マネジメントまで幅広く行っていた。
小沼
役職:UXデザイナー
所属:コンシューマー事業本部
現在はあすけんアプリのUXデザインを担当している。元々ファッションデザインを学んでいたが、Webをやりたいという気持ちで、Webデザイナーに転向。もっとUXデザインを極めたいという気持ちで、askenに入社した。
伊藤 (進行役)
役職:PdM
所属:コンシューマー事業本部
PdMとUXデザイナーからなる企画チームに属しながら、プロダクトの中長期計画や方針策定、プロダクト開発スクラムチームのプロダクトオーナーを担当。
これまでのキャリアについて
伊藤:
お二人のキャリアには結構共通点がありそうですね。お二人ともアパレルから入って、現在はUXデザインを担当されていますよね。
田仲:
みんな最終的に辿り着くところはUXなんじゃないかと思うんですよね。最初はデザインをやりたいと思うけど、UI改善を続けていくうちに、ユーザー理解の方がおもしろくなってくるという感覚。「自分が好きなデザインを作りたい」というところから、ユーザーのことを理解して、「その人に刺さるものを作らなければいけない」、という方向にシフトしていく。デザインを作るよりもユーザーを知ることの方が面白くなっていくというか。
伊藤:
小沼さんも同じ感覚ですか?
小沼:
私もそういう感覚です。私はデザイナーとしてのキャリアの初期に「気づき」の体験があって、『誰のためのデザイン?』という有名な本があるんですが、それを読んだ時に、今まで自分の好きなにデザインをしていたけど、人を幸せにするためにデザインをしなければいけなかった、と「ガーン!」となったんです。。それでもなかなか自意識が捨てきれませんでしたが、段々と、「もっと使ってくれる人のことを知りたい」という気持ちが強まっていきました。
伊藤:
おもしろいですね。自分が美しいと思うものを作りたい!というアーティスト的な方向性と、人の心理や行動を理解して問題を解決したい!というデザイナー的な方向性に、キャリアが進むうちに分かれていくんですかね。その意味だとお二人はデザイナー的な方向性で活動していく場として、askenを選ばれたのですね。
askenでのデザイナーの仕事内容
伊藤:
お二人はaskenでどういう仕事をされていますか?結構お二人がやっていることは違いますか?
田仲:
結構似てるんじゃないでしょうか。リサーチと検証を繰り返して、いい体験を作ろうというのを重視している感覚です。
小沼:
そうですね。田仲さんとは週一回デザインレビューをしていて、そこでは、ユーザーの体験をどう作るかに重きをおいて話すことが多いです。
伊藤:
なるほど。例えば最近だとどういうテーマがありましたか?
田仲:
最近だと、行動変容プロジェクトで定性調査を行なったので、その考察結果を小沼さんに共有しました。直接デザインの話というよりも、もう少し手前の話で、ユーザー心理とかの方が近いですかね。
伊藤:
具体的にどういう調査をして、どういう形でまとめていくことが多いですか?
田仲:
私の方は、「人を行動変容させるにはどうしたらいいか。」を、定量と定性の両面から調査しています。定性だと数人の人に数日間のユーザーテストを行なって、自分達のソリューションが受け入れられるかを見ています。定量では、定性調査の結果を元にした仮説の検証を、アンケートツールを使って何万人かの人に回答してもらって行いました。このフェーズでは、UIは全然作っていないですね。
伊藤:
小沼さんは最近はどういう調査をしていますか?
小沼:
田仲さんよりはもう少し探索的な調査をしています。ダイエットってどうしても続かない人が多いのですが、その背景には、どういう生活や心理があるかというところを広く調査していました。
伊藤:
何か発見はありましたか?
小沼:
その人がどういう情報に触れて、どういうダイエットを魅力的だと思うか、ということにすごく左右されるという発見がありました。それがいい方向にも悪い方向にも作用していると感じています。
伊藤:
お二人がお話ししてくれたのは、結構プロジェクトの初期の方の調査かと思うのですが、あすけんのアプリとして世に出ていくまではどういうプロセスになりますか。
小沼:
まず、現在のユーザー体験を踏まえて、あすけんでどのような理想的な体験を提供したいのかを明確にします。そのビジョンをもとに、ユーザーがアプリ内でどのような行動をするのか、またどのような情報を提供するべきかを考えます。次に、エンジニアと協力してディスカッションを重ねながらプロトタイプを作成し、実際にユーザーに試してもらうプロセスを経て、最終的に機能として世に送り出していく流れです。
伊藤:
結構さくっとプロトタイプを作ってニーズを確かめるということもしていますね。エンジニアとも関わることが多いですか?
小沼:
多いですね。。askenのエンジニアは話しやすいし、的外れな質問でも笑わずに聞いてくれるので、細かくやり取りしたり、プロトタイプに足りないもののフィードバックをもらったりしていて、みんなで作っているような感覚があります。
伊藤:
田仲さんから見ると、askenのエンジニアの印象はどう映りますか?
田仲:
医療事業部はスクラムでの動き方として、「チームで解決していくこと」をかなり重視していました。分業ではなく、基本的にデザイナー・エンジニアが一緒に作業をしていくような状態でした。プロダクト志向のチームというか。
伊藤:
エンジニアとしては企画段階から携わることができるし、デザイナーとしては技術に詳しい人とかなり近い距離でデザインや体験設計ができるという環境なんですね。
田仲:
そうですね。それもありますし、基本的にはチームでゴールを共通認識化して進められるっていうのがとても大きくて。みんな目指すところは一緒で、ただ使ってるツールが違うよねくらいの感覚で進められるので、そういう意味でチームで動くというのはかなり良い体験で、今もできています。
伊藤:
違う職種の人たちが同じゴールを見ているというのは理想的な状況かなと思うんですが、何かこういうことをやったからその状況を作れた、みたいなことはあるんですか?
田仲:
これはやっぱり失敗体験がありまして。認識が揃わない状態でばーっと進んだ後に、実は目指している場所が違ったということに気がついて、手戻りが発生するということが二、三回ありました。医療事業部は、多種多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まる部署だったため、お互いの経歴や専門性に対する理解が浅く、意見が食い違ったときに腹の探り合いをしているような状態になる時期が数ヶ月ありました。その経験から、互いの認識を揃えるのに時間がかかったとしても、だいぶ進んでから手戻りが発生するよりかは結局早い、ということがわかったので、今の動き方になっています。
伊藤:
その中で、田仲さんがデザイナーとしてとったアクションはありましたか?
田仲:
それぞれのメンバーが持っているドメイン知識が全然違うという問題がありました。私はユーザー体験に対するドメイン知識は結構あるけど医療の知識はない、かたや医療に対するドメイン知識は強いけど、ユーザーのことは全然わからない人もいる、というような。なので、お互いがそれぞれの知識を共有しあうようにしていて、デザイナーとして私はユーザー理解ってこういうことだよ、というのを強く推進して皆に共有していっていました。逆に、私の知らない医療の知識は、診療ガイドラインや文献を読んだりしていました。それでも当然お互いの知識格差は埋まらないのですが、違うドメイン知識を自分に取り入れたり共有したりすることで、共通認識を合わせるのをスムーズにしていった、ということがあります。
伊藤:
チームの話になりましたが、小沼さんの方はいかがですか?
小沼:
現在は、プロダクトマネジメントグループにいるので、他のメンバーはPdMで、自分だけデザイナーという状況ですが、そこまで差を感じないというか、「どうしたら体験がよくなるか」ということをみんなで一緒に考える体制になっていると思います。
伊藤:
そうですね。それぞれの専門性はありつつ、どういう風にやっていくかを対話しながら組み上げていく感じがありますね。
「デザイン羅針盤」プロジェクトについて
伊藤:
サイドプロジェクト的に「デザイン羅針盤」という取り組みがありましたが、これはどういう取り組みですか?
小沼:
あすけんのデザインは、17年の歴史の中で色々な経緯を経て、古い部分や統一感がない部分が残されてしまっていたり、ロゴや未来さん*2 のキャラクターなどブランドに関わるアセットの取扱いがはっきり明文化されていない部分があったりしました。なので、「あすけんのブランドというのはこういうものなんですよ」と社内外に発信できるように言語化していこう、という取り組みです。
小沼:
デザインをCPOの道江さんにレビューをしてもらう時に、「このデザインで、ユーザーのモチベーションをどうあげることができるの?」という厳しいフィードバックがくることが多かったんです。きっと道江さんの心の中には、大切にしたいコアがあって、それに引っかかっているから通らない、けどそれが何かわからない、という状態になっていました。これだといつまで経っても道江さんにお伺いしないと、自分達であすけんらしいものが作れない。あすけんのコアを自分達できちんと明文化することで、デザイナー自身でユーザー体験の評価ができるようにしていこうという取り組みでした。
伊藤:
組織も大きくなってきてますからね。やっぱり創業者の人がいないと何もできませんというわけにはいかないので、その知識を言語化して普及させようという取り組みだったと思います。その中で、UXデザイナー的なアプローチもとっていましたよね。
小沼:
そうですね。道江さんに5時間、いやもっとかな、インタビューをして、UXの5階層モデル のレイヤーごとに、あすけんのアプリで今これを表示しているのは、こういう理由があるんだよ、ということを深掘りしていきました。
伊藤:
田仲さんはaskenの社歴も長くなってきていますが、改めてこの取り組みをやってみてどうですか?
田仲:
私もコンシューマ歴が長いかと言われると、部署移動や産休育休もあったので、そうでもないんですが。それでもそれなりにあすけんらしさみたいなのは分かっていたつもりでした。でも意外と知らないことが多くて、創業者の中にしかなかった考えを引き出せたのかなと思います。改善の余地がある部分や守っていくべき部分が、創業者からヒアリングすることで色々見えてきたかなと思いました。逆に、初期にはあったけど今はない機能の理由なんかはもうちょっと聞いてみたいです。
伊藤:
まだまだ解き明かしたいところはあるということですね。この活動を通して、あすけんらしさとは、結局どのようなところだと思いますか。
田仲:
私の印象では、あすけんは「全てがやさしい・柔らかいイメージ」です。色もそうだし、トーンや喋り方も、全部柔らかい、ニュートラルなイメージを持ちましたね。アプリのテーマカラーは抹茶色みたいな感じなんですが、感覚的なイメージでいうとベージュとか肌色みたいな優しい色。未来さんの喋り方一つとってもそうです。あと、自分が思っているよりも未来さんの存在が皆に影響を与えているっていうことがわかったかな。
小沼:
そうですね。なぜこういうやさしいアプローチになっているかというと、ユーザー自身が自分で考え、自ら進んでいくことを大切にしているからです。あすけんは、その歩みに寄り添い、一緒に進む伴走者のような存在であり、必要なサポートや力添えを提供する役割を担っています。あくまでも主体はユーザーで、その意思を尊重するというところなのかなと思います。UXライティングでも、押しつけみたいな、「〜しましょう」というような言葉は使わないようにという指摘を社内の栄養士からよくもらうんですが、それもそういうことなんだなという気づきがありました。
伊藤:
そこには栄養士としての道江さんの考え方もあるのかもしれませんね。
それぞれの業務でのおもしろさや難しさ
伊藤:
では、現在の業務の話に戻りますが、それぞれの業務でおもしろい部分や難しい部分はありますか?
田仲:
やっぱり成果のスピードにコミットする難しさはありますね。今、全社的にそこを重視していると思いますが、私たちの仕事って時間のかかる仕事なんですよ。調査して、ユーザーの「?」を解き明かして、仮説をアップデートして、ソリューションを作って、というのは普通に丁寧にやったら2ヶ月3ヶ月かかる作業なんですが、それを1ヶ月で出すと。本当に常に質とスピードのトレードオフを考えています。これはかなり難しさを感じますが、当然早くだせば仮説のアップデート回数も増えますし、成果への近道になるという感覚はあります。そこで得た気づきがすごいアハ体験になるんですよね。新しいことを知れた時って、ものすごい脳汁がでるじゃないですか。あの楽しさと辛さのバランスが難しいですね。
伊藤:
新しいことが分かった時の嬉しさが原動力になって、頑張ってスピードを出そうという気持ちになるんですかね。
田仲:
そうですね、それしかないくらいです。
伊藤:
なるほどなるほど。難しさとおもしろさを両方語っていただいてありがとうございます。小沼さんはどうですか?
小沼:
そうですね。難しさも楽しさも両方同じところになると思います。人間誰しも食事をするわけで、色々なことを無意識にやっているわけです。なので、なぜこの人はそんなことをするのだろう、というのを聞き出したり、分析してくことは難しい。なぜあなたは昨日チョコレートを食べたんですか?と聞かれても、すぐに答えられないじゃないですか。そこを解き明かしていくのは難しい部分もあるし、こういうことだったのかとわかる部分もあります。ユーザービリティテストが好きなので、「こういう使い方をするのか」ということがわかったり...
伊藤:
さきほど実施していた社内でのユーザビリティテストでも、そういった発見がありましたね!
小沼:
そう、こういう「そこを触るんだ」とか、「この人はこういう食事の仕方をするのか」、ということに気づくのがおもしろいなと思いますね。
伊藤:
人間誰しも食事をするし、食事のスタイルは十人十色なので、そこに対してプロダクトはどう関わっているのかというのは、めちゃくちゃ発見の多いテーマで、そこがお二人のやりがいとか楽しさにもつながっているのかもしれないですね。
今後の展望
伊藤:
そんなお二人の今後の展望を教えてください。
田仲:
私は今、自分の興味関心として、どうやったら食事管理が続くんだろうなということをやっぱり思うんですね。そんなことは、私が入社した時から既に皆考えてはいたんだけど、今その部分により興味があって。どうにかして食事記録を続けさせようと皆しているんだけど、<カロリーを目標範囲内に収められた成功体験>以外の部分も、続けられる要因としてはあるんだろうなと。未来さんという存在をもっと活かして、寄り添いという形の伴走がもっとうまくいったら続くんじゃないかなと思っているんです。未来さんがいかにその人を勇気づけられるかっていうことが重要なんじゃないかと思っていて、そっちの方をブラッシュアップしていく方向を深めていけるとおもしろそうだなと思います。UIとかもう関係なくなってきてしまいますけど。
小沼:
私はaskenがデザイン力のある会社だと思われたい...! 使っていると自分が一歩ずつでも前に進んでいることを体感してもらえるようなアプリに進化していけるといいなと思っています。
伊藤:
お二人の話を聞いていると、単なるツールアプリを作っているのではなく、ユーザーさんの人生をいかに豊かにするかみたいなところで考えているんだな、というのがよくわかりました。
伊藤:
最後に、こういうデザイナーさんと一緒に働きたい、というのを教えてください。
田仲:
やはりユーザー体験を重視する人、ですね。芸術志向というよりは、いかにユーザーさんを幸せにしてあげられるかということを考えて、デザインを起こせる人と働きたい。あとは、自分で動いて人を巻き込める人だと嬉しいです。チームメンバーを巻き込んで推進できる力があると、一緒に働いていて楽しいですよね。
伊藤:
より大きな仕事をしていく中で、そっちの方がエキサイティングですよね。小沼さんはどうですか?
小沼:
自分で学んでいく姿勢がある方がaskenで力を発揮していけるかなと思います。全社的に、自分の業務に関わることもそうでないことも学んでいる人が多いので、そこに食らいついていく、それを楽しくできる人が向いているんじゃないかなと思います。
伊藤:
確かに、askenのメンバーは学習意欲が高い人が多い印象がありますね!それでは、本日の座談会は以上となります。ありがとうございました!
編集後記
普段なかなか聞くことのできない、デザイナーさんの仕事の背景を聞くことができて、とても濃い内容になりました。私は特に「あすけんらしさとは」の部分が印象に残りました。 みなさんご参加ありがとうございました!
askenでは一緒に働いてくれる仲間を募集しています。