asken テックブログ

askenエンジニアが日々どんなことに取り組み、どんな「学び」を得ているか、よもやま話も織り交ぜつつ綴っていきます。 皆さまにも一緒に学びを楽しんでいただけたら幸いです!

異なる専門性のメンバーが「ルールのある対話の場」を通じてチーム一丸を目指した話

はじめに

みなさん、対話してますか? asken医療事業部の河合です。私はプロダクトマネージャーとして、多業種・多文化のメンバーが集うチームで日々プロダクトづくりに奮闘しています。

この記事では、私たちがチーム一丸を目指すために「ルールのある対話の場」を活用し、それを通じてチーム体制の刷新や、信頼関係の土台を構築できたという事例を紹介します。

私たちのミッション

弊社askenには、多業種・多文化のメンバーが集まっています。

その中でも、私の所属する医療事業部では、エンジニア、デザイナー以外にも管理栄養士、医師、薬事担当など、多岐にわたる専門職のメンバーが集まっています。まさに多文化・多業種の集大成と言えます。 これは、私たち事業部のミッションが「デジタルセラピューティクス(DTx)」と呼ばれる、治療を目的に処方される治療用アプリの創出に取り組んでいるからです。

解決したかった課題

それぞれのメンバーが持つ専門知識や背景が大きく異なるため、コミュニケーションギャップが生じることも少なくありません。こうしたギャップは、組織内で縦割り的な分断を生み、プロダクトの成功において障害となることがありました。

当時の医療事業部内では、私を含め異なる専門性を持つメンバーの意見が対立し、建設的な議論が進みにくいという課題が浮上していました。このままでは、成果に悪影響を及ぼしかねないと強い危機感を感じたため、この課題に対し「対話」を通じて解決を試みることをチームに提案しました。

「対話」を重視した背景

私が「対話」を重視した背景には、私自身の過去の経験と、会社のバリューという2つの大きな理由があります。

理由1: 個人的な経験

以前、少人数のベンチャー企業で働いていたときのことです。当時は経営者と毎日のように会話していたにもかかわらず、互いの会話が噛み合わないということがかなり頻繁に起こっていました。同じ言葉を使って会話しているのに、物事の捉え方や常識が大きく違うという状況は、当時は非常にフラストレーションを感じるものでした。しかし、同時に「人は認識が合わないことが当たり前」という現実を強く意識するきっかけになりました。

この経験を通じて、コミュニケーションでは、他者とは認識のズレがある前提に立ち、それをいかに埋めていくかが重要だと気づきました。その手段として、対話を重ね互いの理解を深めていくことが、チームでゴールを目指すために不可欠だと考えるようになりました。

理由2: 対話を推奨する組織文化

弊社のバリューのひとつに、「強い優しさで対話」というものがあり、対話を重視することが社員の行動指針に掲げられています1。 さらに、対話をする上では必要に応じて「ルールのある対話の場」を設けることが推奨されています。具体的な手法として、学習する組織の「チーム学習」と呼ばれるフレームワークを採用しています。(弊社では、便宜上このフレームワークを「ダイアローグ」と呼んでいるため、これ以降は「ダイアローグ」と記載します)

askenでは、全社的にこのダイアローグを活用することが推奨されています。社員向けのワークショップや研修では、ダイアローグの実践方法を学ぶ機会が設けられています。私自身も、過去にメンバーと意見が対立した際に、1on1でダイアローグを試してみたことがありました。その結果、互いの認識をすり合わせ、建設的な解決策を見つけ出すことができ、ダイアローグの有用さを実感していたところでした。

多人数ダイアローグを実施するまでの流れ

ダイアローグを効果的に実施するためには、事前準備と当日の進行が重要です。 おおまかな流れは以下のとおりです。1対1ではない多人数のダイアローグを実施するのは初の試みだったため、リハーサルなどでタイムテーブルの調整などを行うことで、当日の設計を固めていきました。

1. 事前準備

  • イシューの特定: ダイアローグの中心となるテーマや解決すべき課題(イシュー)を明確にします。このときの私たちのイシューは「私たちはどういう仕事の進め方で、DTxのゴールを目指すか?」というものでした。
  • 参加者の意見の把握: 各参加者が持つ意見や視点を事前に把握し、特に対立が予想される意見を明確にします。これにより、ダイアローグ中に重要な論点が見落とされることを防ぎます。
  • ルールの設定: ダイアローグに参加する全員が守るべきルールを明確にします。例えば、「他者の意見を尊重する」「話を遮らない」「決して個人攻撃をしない」などの基本的なルールを事前に共有します。

2. 当日の流れ

事前準備が整ったら、ダイアローグの当日は以下の4つのステップに従って進行します。

2.1 ダウンローディング

  • 目的: このステップでは、参加者が他者の意見や情報を受け入れるために心を開き、傾聴することに集中します。自分の意見や反論を控え、他者の発言をそのまま受け取るように努めます。
  • 工夫したポイント: 多人数ということもあり、事前記載にしてもらうことで対話の時間を多く割けるようにしました。

2.2 ディベート

  • 目的: ダウンローディングで収集した意見をもとに、具体的な議論を行い、意見の対立点や一致点を明確にします。
  • 工夫したポイント:多人数であることとタイムテーブルの兼ね合いから、今回はこのパートでは議論にフォーカスせず、主張の内容を正しく理解するだけにとどめました。

2.3 ダイアローグ

  • 目的: ディベートで出された意見を踏まえ、共通の理解を深めるための対話を行います。ここでは、対立を乗り越え、チーム全体が納得できる合意点を探ります。
  • 工夫したポイント: 各自の発言量が偏らないように、メンバーごとに持ち時間を割り当て、関心の強い相手と十分対話ができるような進行にしました。

2.4 プレゼンシング

  • 目的: ダイアローグで得られた共通理解をもとに、新たな行動計画や解決策を策定します。この段階では、実行可能で具体的なステップをまとめ、チームの次の行動につなげます。
  • 工夫したポイント: ここではあまり枠組みを固めすぎないことで、発散・共創の場となるようにしました。ここでは意思決定は行わず、最終的な意思決定はマネージャーが行う、という点もあらかじめ明確にしておきました。

ダイアローグを通じて得られた成果

このダイアローグを通じて、以下の成果が得られました。

1. チーム体制の見直し

ダイアローグの結果、現在のチーム体制ではゴールに最短で到達できないという結論に至りました。そのため、チームの再編成が必要だという意識がメンバー間で共有されました。ここで特筆すべきは、体制の見直しがマネージャーだけでなく、現場のメンバーを含めた議論によって導き出されたことです。これは、全員が対話を通じて自分の意見を反映させ、チーム全体の方向性に納得感を持てたことを示しており、大きな成果と感じています。

2. 信頼関係の構築

もうひとつの重要な成果は、メンバー間の信頼関係の土台が築かれたことです。ダイアローグを通じて、各メンバーがどのような価値観を持っているのか、その意見の背景にある考え方や感情を理解できるようになりました。この理解が深まることで、意見が対立しても建設的な議論に発展しやすくなり、チーム全体がより協力的に動けるようになりました。

ダイアローグは、単に意見を出し合う場に留まらず、信頼と共感の基盤を築き、チームの未来を共に作り上げるための重要なステップとなりました。

反省点と次のステップ

当時は事業部内でかなり緊張感が強まっていたと私自身が感じていたこと、また初めての複数人でのダイアローグという不確実性があったため、慎重に進めすぎた部分がありました。リハーサルを行うなど、準備に時間をかけましたが、もう少しスピード感を持って取り組むことができたかもしれません。今後は、迅速かつ効果的にダイアローグを行えるような工夫は意識していきたいと思いました。

結論

多文化・他業種のメンバーが一体感を持ち、共通の目標に向かうためにはルールのある対話の場である「ダイアローグ」が非常に有効であると、改めて実感することができました。この手法を活用することで、チーム内の対立を建設的な議論に変え、組織全体のパフォーマンスを向上させることが可能です。専門性の異なるメンバーが一丸となってゴールに向かうための対話の重要性を、今後も広めていきたいと思います。

最後に、askenでは一緒に活躍してくださる仲間を募集中です! https://www.asken.inc/job


  1. 「掲げられてます」といいつつ、実は私は社内の「組織強化委員会」のいちメンバーとして、上記バリューの策定にも関わっていました。