なぜエンジニアはマネージャーになるのに不安を覚えるのか

こんにちは。askenでエンジニアリング戦略や組織づくりを担当しているやすにしです。

マネジメントを中心にしておりまして、せっかくなのでブログでもマネジメントについて書いてみますね。

私はこれまでVPoEとしてエンジニア組織のマネジメントや、様々な会社でマネージャー向けにコーチン1 をやってきました。そこで接してきたエンジニアリングマネージャーに共通しているのは「キャリアに悩んでいる」ということです。
例えばこのようなことです。

  • コーディングをしなくなり、技術的に取り残されて、エンジニアとしてやっていけなくなる感じがする
  • 自分でやらないから成果が見えない。やっている感じがしない。
  • マネジメントをどうやればいいか、どう学べばいいかわからない。
  • マネージャーのキャリアで自分は定年(?)まで生きていけるのか?

共通点は、色々理由を言葉にしているものの、どれもしっくりきている感じではなく、「なんとなく不安」という感じでした。私自身は、組織に課題感を感じることが多い人種だったので、以前よりマネジメントにも興味を持ち色々やってきたものの、同じような不安を感じることがありました。だからこそ、今はプロダクトづくりにも時間を割いていることは確かです。

そこで、実体験や他のエンジニアリングマネージャーのお話から、私なりになぜ不安なのかを整理してみました。

エンジニア(プレイヤー)→マネージャーは何が変わるのか?

もともとエンジニア(あるいはプレイヤー)だった方がマネージャーになることがほとんどだと思いますが、エンジニア→マネージャーになると何が変わるのでしょうか。

一般的には「リーダーシップ」と「マネジメント」が求められると言われています。 ふむふむ、そうだよねと思いつつ、リーダーシップとはなんでだと思いますか?マネジメントはなんだと思いますか?

答えは無限にあり、唯一の正解はない世界ではありますが、私なりに定義をしてみました。

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リーダーシップ:一歩踏み出す

リーダーシップは、一部の人に求められることではなく、すべての人に求められることです。戦略を作り組織の先頭に立つような大きなこともそうですが、シーンとしている会議で最初に発言する、会議でホワイトボードの前に自ら立つなども大事なリーダーシップです。それぞれに共通的な行動とは何かを言語化してみた結果、「一歩踏み出す」を選んでみました。

マネジメント:チームを成果に導く

マネジメントは、自分で手を動かして成果を出すのではなく、チームが成果を出せる状態にすることだ、という意味でこの言葉を定義してみました。ドラッカーエッセンシャル版マネジメント

組織をして高度の成果をあげさせることが、自由と尊厳を守る唯一の方策である。
その組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネージャーの力である。

と言っています。

答えがわからない上に、やったことがないことを求められる

マネージャーになり、リーダーシップとマネジメントを求められた時に、この事実を目の当たりにします。

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つまり、答えがないことに答えを出し、自分がやらずに成果を出すことをやらなければなりません。そして、エンジニア(プレイヤー)としてやってきた 仕事のやり方を大きく変える 必要があり、このように戸惑います。

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答えがわからない」上に、プレイヤー経験のみの方は「やったことがない」ことをやらざるを得なくなるのです。これは戸惑うのが当たり前です。みんなそうです。私も未だに変わりません。

これが、プレイヤーからマネージャーになったときに戸惑ってしまう理由だと私は考えています。

答えがない事実を受け入れ、学び続けること

じゃあどうすればいいか。私が学んできたリーダーシップやコーチング経験から考察してみます。

まず大事なのは「答えがない事実を受け入れる」ことです。すべてのことに答えはありません。人によって違う認識があり、違う選択があるだけです。つまり、自分で答えを出すしかありません。大きい組織や影響力が大きい意思決定においてはなおさらです。いくら情報を集めても判断の決め手はなく、決して断つ、つまり決断が必要な場面ばかりです。リーダーシップを発揮するというのはそういうものです。それを受け入れ、自分で考え、決めていくしかありません。個人の人生における選択も答えがない問いの連続なので、誰しも必要なことかもしれません。

答えがないことに向き合う上で、もう一点大事なのは、「学び続けること」です。わからない、できない自分を受け入れ、どんなこと、どんな人からも学ぶ。そして、仮説と検証とふりかえり。つまりアジャイルな人になるということです。

大人の学びとは「悦び」であり、「痛み」でもある と言われています。わからないことに対峙すると、ときに居心地の悪いこともあります。でもそこに向き合い乗り越えていくことで、「わかった!」「できるようになった!」という悦びを得ることができます。 もしこのような学びに対峙できれば、視野が広がり、人間的な成長をすることができるなあと個人的に実感しています。マネージャーをやった結果の学びなのに、エンジニアとしての視野も広がり、技術に対する景色も変わってきます。

エンジニアとマネージャーの共通点

では、エンジニアとマネージャーはぜんぜん違うから、エンジニアのスキルは活きないのか、というと僕は全くそう思っていません。 私が考える共通点を2つ挙げてみます。

①エンジニアリングもマネジメントも課題解決である

実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである

私の好きな ピープルウェア(トム・デマルコ) の一節です。現実的にはそんなことばかりです。マネジメントは社会学的な課題解決をしていくとも言えます。同時に、私が出会ってきたエンジニアの多くは、課題解決が大好きです。その時点でエンジニアはマネジメントに向いているのではないでしょうか。

②すべてがモデリング(設計)である

私はモデリングが大好きで、何をするときもモデルにして考えてしまうのですが、これはかなりマネジメントに活きているなと実感しています。

ドラッカーはマネジメントを

組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関

と定義しています。道具、機能、機関を作ること自体、モデリング(設計)です。全体を俯瞰し、目標を作り、制度を作り、組織を作り、チームを作る。そこにどういうメッセージを投げかけ、働きかけて変化をつけていくかもモデリング。1on1で話すときは相手のメンタルモデルを理解して問いを投げかけます。だからマネジメントをしていく際には、常にモデリングだ!と思ってやるようにしています。

パワーアップしてエンジニアに戻ることができる

私自身はエンジニアリングマネージャーをやりつつ、コーディングも続けながらプロダクトマネジメントに足を踏み入れているのですが、私の知り合いでも エンジニア専任に戻った方 を何人も知っています。彼らを見ていて思うのは、パワーアップしてエンジニアをやっているなと感じます。例えばこんな部分です。

  • リーダーシップを発揮する経験をしたことで、マネージャーや経営層が何を考えて意思決定しているかその意図も読み取れる
  • マネジメントを経験したことで、今のチームで自分はどんな言動をすると成果につながるかを意識しながら動ける
  • 目の前のタスクや事象だけに惑わされず、全体を俯瞰した上で、最適な行動を選択できる
  • 言葉にして伝える大切さを学んだことで、チームとのコミュニケーションやコーディングに活きる

などなどです。マネージャーでの経験は確実にエンジニアでも活きます。面倒なことも多いことは否定しませんが、チームのパフォーマンスに大きく影響しますし、全然別の景色が見えるし、人間的にも成長させてもらえる価値ある役割だと思います。そして、マネージャーになってもエンジニアに戻れます。これは絶対。キャッチアップできます。

一方で、askenではスペシャリストのキャリアも用意しています

とはいえ、人には向き不向きや好き嫌いがあります。 エンジニアリングが好きで、エンジニアとして深く広く活躍できる方は、ずっとやっていたほうが良いに決まっています。なので、askenではスペシャリストでも活躍できるキャリアを用意しています。

興味のある方は是非 ご連絡 くださいませ。


  1. freeeさんやSansanさんで、マネージャー向けに今もコーチングをやらせていただいています